こちらはlutamestaの創作活動ブログです。
主に自分が作ったきぐるみ(fursuit)関係の情報を扱っています。

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since 2019/2/9

【制作過程】ラシアさん(laxia)



全身ばきばき鱗甲殻系きぐるみ、ラシアさんの制作過程です。
まずラシアさん、大変よろこばしいことにJMoF2019のクリエイターコンテストにて2位となりました。
というかその場にいらした方はご存知だと思いますが同率1位でした。
ここまでニッチなコンセプト、ニッチなデザインのきぐるみが、
1位タイまで食い込むことができたという事実は心中深く噛み締めております。

制作期間はヘッド3週間、ボディ約3か月半です。
自分自身の備忘も兼ねており、かなりの長文となりますがお付き合いいただければ幸いです。

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【設定とデザイン】
ラシアさんの種族は爆神(自分のオリジナル種族)です。性別はありません。
デザインコンセプトは "ドラゴンという生命体を模して形成された人工的な神性" です。
ナマモノ感・生物感は意図的に避けつつ人工的・機械的な模様を取り入れています。

今回フェイクファーは一切使っておりません。それは最初から決定事項でした。
普段からばきばき!ばきばき!とか言っているので、フェイクファー抜きでどこまでの物が作れるのか、挑戦してみたかったというのもあります。



自分は設定画をはっきり定めて制作するタイプの作家ではないみたいです。
ラシアさんもアバウトな設定画で見切り発車しています。
どのみち制作過程で各所柔軟にデザインを変えていくであろうことはわかっていたので、まあそんな感じです。

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【ヘッド】
ヘッドベースはゲントウさん(twitter:@gen_tou)よりご提供いただきました。
ラシアさんが現界するきっかけを与えてくださったゲントウさんに今一度御礼申し上げます。


3Dプリンタ製のベースです。元はシンプルだけど要点を押さえた感じのドラゴンです。
かわいい。





形状的に目元から視界を取るのが困難だったので、模様としてくり抜いた顔面の中心部から外が見えるようにしました。
他、鼻先を延長したり角を足したりした上で、エポキシパテで鱗のディティールを手作業で作っています。
この過程はものすごく楽しくて楽しくて仕方なかったです。



後頭部はすべて自由自在ボードで作っています。
かなりの小顔なので、ヘルメットのように下からスポっと被ることはできません。
顔面部と後頭部で前後分割するようになっていて、磁石とベルクロで留めています。
あまり大口開けることはできませんが、顎可動も搭載しています。
ファーなしで顎可動パーツを外から見えないようにしつつ分割を両立させるの大変でした。ほめて。






サーフェイサーを吹いて本塗装待ちの状態です。

自分の作るばきばきヘッドは基本的に重いです。ラシアさんは約1.6kgあります。
重量増加は極力避けるようにしていますが、今回は後頭部をすべて自由自在ボードで作っていることもあってどうしようもないです。
ただ比較的重さの偏りがなく、且つ頭全体に重みが分散するので、被ってみるとさほど気にはなりません(個人の感想です)


目玉も自作です。この時はレジン半球を自作し使用しています。大きさはφ35です。
現在爆苑工廠で販売中の目玉は基本的にすべてグラスアイです。
ラシアさんと同じタイプの瞳も(在庫があれば)ありますので、興味のある方はリンクからオンラインストアをチェックしてみてください。
ちなみにこの記事を投稿している今現在はグラスアイ自体の在庫僅少です。
準備悪くてすみません。







そんなわけでヘッドです。
ちなみにデビューは2018/5/13のデザフェスです。

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【ボディ】
ヘッドができた時点(2018年5月)でボディのデザインはまだありませんでした。
ほわぱーちゃんことWhite Pearlちゃんの制作を間に挟み、9月下旬からボディの制作に取り掛かりました。

全体のデザインが見切り発車だったので、パーツが完成した部分を基準にして、
まだデザインが固まり切っていない部分のデザインをそれに合わせる形で決めて制作…という流れを繰り返しました。


3Dプリンタを導入したので、いくつかのパーツはそちらを使って作製しています。
具体的には足/脚/大腿/腕/肩が3DP製です。あと没にした翼のパーツも作りました。
そう簡単にホイホイできるものではないです。失敗作山ほど出してます。
ベッドから剥がれて失敗、リトライしてマシントラブルで失敗、直してリトライして脱調してリトライようやく成功したと思って試着したらサイズが合わなくてデータ作り直してリトライしてまた脱調脱調そしてまた脱調マシンパーツ破損して取り寄せたネジが調子悪いのでナイフで内径無理矢理ゴリゴリ削ってどうにか出して試着したら今度はサイズが大きすぎィィ(以下略)

何が言いたいかというと、3Dプリンタはボタン一つ押すだけで何の苦労もなく思い通りの物を作ってくれるチートマシン…とは言えません。少なくともまだ今は。
体感的には高度な工作機械の一種です。日本語のリファレンスもまだ少ないです。
そんな中、半ば手探りで使い方を探求している先人の方々には本当に頭が上がりません。



最初にデザインが固まっていたのが足/脚/大腿/腕/肩だったので、そこから制作開始しました。
耐久性を考慮し厚み3mmとかで出しています。足に至っては4mmです。
丈夫さ重視でPETGを採用していますが表面処理しにくいのが難点。
どうしても気になるところは修正しましたが、時間がなかったのと重量増加の不安があったので今回積層痕消しは大部分ノータッチです。
正直今でも心残りです。



3DPで各パーツを作りつつ、同時並行で翼の試作を作っていました。
可動式の翼は当初は背中に搭載する予定で、形状も現行と異なり板状の翼をワイヤーで引いて展開するタイプのものでした。
ですが、3Dで作ったラシアさんのデータに仮の翼を付けて展開シミュレーションしてみたところ、翼面積のかなりの部分が自分自身の身体に隠れてしまってロマンがないなーと思ったので却下。


次に腕搭載型・レバー開閉型の翼のモックアップを作成し、動作もいい感じだったのでそれを採用しました。
翼の展開構造はRachelさんの背負い式開閉翼を参考にしています。
元は背中に搭載した翼を腕と連動させて開閉/前後するものですが、
翼自体を腕のパーツに搭載し、且つ手元の操作で開閉できるよう魔改造しました。


木材(合板とバルサ)で作ったフレームに、板状の翼をCOSボードで作って貼っています。
上のはCOSボードの型紙となる段ボールで形状を確認しているときの画像。
本当は板材だけでフレームと翼を兼ねたものを作りたかったのですが、東急ハンズ名古屋店には幅10㎝までのバルサ板しか取扱いがなかったのであった。





全体的に生物感のある形状を意識しつつ、内側(腹側)は装飾的なデザインに、
外側(背側)は翼っぽい見た目を極力隠し、"盾"を意識したデザインとしました。
翼を閉じたときに最小限に収まりつつ、翼を開いたときに美しいフォルムが出せつつ、且つフレームとCOSボードが干渉しない構造…等、とにかく考えることが多かったです。
一番外側の翼に透かし模様を入れているのですが、角度によって内側に塗った青緑色がチラ見えするのが個人的お気に入りポイントです。






胴(胸・背中)は針金で作ったフレームに自由自在ボードを張って基礎を作りました。
胸は更にその上からCOSボードを貼ってディティールを造形しています。
この辺りは素材選びも製法もかなり紆余曲折しているので、正直言って参考にできるものではないと思います。
接着時間の長さにぐぬぬ…ってなりながら作業していました。
あとCOSボード自体の扱いにくさで奥歯をかみ砕きそうになりながら作業していました。




腰も針金でフレームを作ってCOSボードを貼り付け。制作中の写真がなかった…
COSボードの残量が不足したので余っていたサンペルカも動員しています。
装飾とボディライン作りも兼ねてメタリックブルーの布をジャンパーホック付けて取り付け。
最後に写真の装飾パーツを4枚ぶら下げてます。よく見るといろいろ書いてあります。




お尻からではなく脊椎が枝分かれして背中から生えてるタイプの尻尾(←すき)
中身はウレタンです。背中から着脱可能な設計。
振れる尻尾を目指して作ったのですが、基礎の状態で試着したらものすごく振れすぎて、チェストの上に置いてあったものすべてをなぎ倒してしまい悲しみに包まれました。
尻尾の甲殻は当初3DPで制作予定でしたが、尻尾が振れ過ぎるので樹脂製では危険だと判断しCOSボード製に切り替え。
完成したらそんなに横揺れしなくなったので樹脂製でもよかったかもしれません。






手は自由自在ボードで作っています。
地味にスマホ対応してます。翼つけてるとほぼ無意味ですけど。





みんな大好き塗装タイム!!!!!!!!!!!
部屋全体をブルーシートで養生して塗装しています。事件はるたハウスで起きてるんだ!
ガスマスクしてるのでさぎょいぷもできない孤独な作業です。
でもメタリック系の塗料乗せ始めるとテンション最高にブチ上がるんですよね~。


これは撮影用にパーツを並べてます。実際こんな狭い間隔で塗ることはできません。
部屋がとにかく狭いので、作業エリアで塗っては乾かし完全に乾燥したものは待避エリアに退けてまとめて置いておく…を繰り返し塗装しています。
もっと広い部屋に引っ越したいという気もありますが、今年の初詣で引いたおみくじに"転居してもいいことない"と書いてあったので今年は引越しません。たぶん。





ボディ制作で一番頭を悩ませたのが、
①関節をどう違和感なくシームレスに処理するか
②いかに中の人の体型をカヴァーするか
という2点でした。

フェイクファー製のフルスーツで①に悩むことはまずないと思います。
ラシアさんの場合、3DP製の筒状パーツをはめた状態で脚や腕等の曲げ伸ばしをするためには、関節部分に相当の余白が必要になります。
関節の動きを阻害しないようにしつつ、その余白を目立たせないようにする必要がありました。


結論から言うと、ブルーメタリックの革で関節を覆うパーツを作りました。
革なので柔軟性があり、且つ色彩的にもそこそこ馴染みつつそれなりのアクセントになっているかと思います。
肘関節、膝関節、足首関節、肩・首関節、腰に使用しています。
あと足の甲にも関節を設置する必要があった(これがないと歩行時、踏み込んだ後につま先で地面をけり上げながら足を抜くことができなくなる)ので、3DPで出した足を甲の部分で真っ二つにカットし、その間をウレタン等で繋ぐという非常に手間のかかる処理をしています。
また関節ではないですが、おなかの装飾や背中の細かい装飾なども革製です。


次に②に関してですが、
こちらもフェイクファー製のきぐるみではアンコの盛り方によって柔軟に対応できます。
インナーの上に直接パーツを着用するラシアさんは、中の人のボディラインがほぼそのまま出てしまいます。

こちらの問題に関しては、パーツの形状でボディラインを作ったり隠したりするようにしています。
腰のパーツが一番その役目を引き受けている感じです(なのにいい写真がない…)
あと(中の人の)肩幅が広いのがデザイン上の支障となっていたので、肩パーツの形状もかなり悩みました。
逆に脚は元の細さを生かせるよう、結構シビアにサイズ調整しています。

今回はこのタイプのフルスーツ制作が初めてということもあり、インナーは市販のウェットスーツを使っています。
インナー自体をケモ体型で自作すれば体型を変えられそうなので、次があれば検討します。次があれば。





そんな感じでラシアさんフルスーツ完成です。
どちゃくそかっこいい(自画自賛)ので、画像いっぱい貼るターンです。
撮影してくださいましたみなさま、ありがとうございました。
写真動画持ってるよー!って方、もしいらっしゃいましたらぜひとも送ってください。














ちなみにラシアさんフルの次回出撃予定ですが、現時点で全くの未定となっております。
理由はこちらの画像を見ればご理解いただけるかと思います。



こちらの荷物3個口にラシアさんフルスーツ一式が入っています。
スケールが分かりにくいですが、右奥の黒くて長いのがきぐるみ業界では一般的な140リッターのキャリーです。
ばきばき系きぐるみの難しい点なのですが、硬質であるがゆえに圧縮ができません。
全身ばきばきで揃えたラシアさんは一人では運搬不可能な荷物量となってしまいました。
ですので、ドアトゥードアで車を出してくださる方でもいない限り、フルスーツの出撃は困難だと思います。

…とはいえもっと外に出したいのも事実。
ハーフスーツになるかとは思いますが、またどこかでお会いしましょう。



ラシアさんの制作過程etcは以上です。
ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。

最後に、今回の制作にあたって繰り返しですがヘッドベース提供等多方面でお力添えいただきましたゲントウさん(twitter:@gen_tou)、
全身の型取りとフルスーツデザインのアドヴァイスで協力してくださった藻尾郎さん(@mobimochi)、
撮影・アテンド等諸々快く引き受けてくださったさてこさん(@sateko_sheep)、言降 論さん(@kotoori_long)、それからとあるリアル知人の御方、
そしてクリコンのリハーサルとJMoF会場までの輸送を手伝ってくれたるた両親に感謝の気持ちを込めてここにクレジットさせていただきます。





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